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このブログは『TW2 Silver rain』の神谷崎刹那、及びその背後が書いている日記です。
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プロフィール
HN:
神谷崎刹那
年齢:
31
性別:
女性
誕生日:
1993/02/10
職業:
中学生
趣味:
読書、家事全般
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……私が高所恐怖症になった理由ですけど恥ずかしいなぁ…。
見たい物好きさんは続きへ。

『黒板を白のチョークが走る。
線は時に曲がり、時に真っ直ぐに進み、黒板の中に教えを描く。
それは数字であったり、文字であったり、絵であったり…。
描かれた物は教師という窓を通して生徒へと伝えられていく。
窓が良質であればより多くの知識を得る事が出来、窓が粗悪であれば言いたい事が伝わらない。
教わる方も真面目な生徒は伸び、不真面目な生徒は伸びない。
現代の教育とはそういう物だ。』
「はい、ありがとうございました、神谷崎さん。」
国語の授業、論説文である。
席に着くと同時にノートに目配せをして、ノートを閉じる。
そして、いつも通り本を開き、読み始める。
そんな日常。
しかし、今日は違っていた。
「先生、授業中に本を読んでいるのはいけない事じゃないんですか??」
絶対に上がらないはずの抗議の声。
学級委員の天城紗江である。
学級委員であるが故、彼女には同じ生徒を注意する権限を持ち合わせている。
しかし、今までにそんな事は無かった。
先生は黙認していたが、注意された手前、仕方なく声をかける。
「……刹那さ…。」
「先生、授業が進んでません。」
あっさりと言を封じる。
しかし今日はその程度では収まらない。
「刹那さん、止めてくださらないかしら??」
高飛車な口調で言い放つ。
「……五月蝿くて本も読めない…。」
付き合うのに気力が必要と判断した刹那はあっさりと身を引いた。
それが日常を崩していく事をまだ知らずに…。
麗らかな日差しが指す青空には、少しずつではあるが暗雲が立ち込めていた。

「天城さん、刹那さんにあんなにはっきり言えるなんて凄いね。」
近くにいた女子が話しかける。
「フフッ…彼女には少し場をわきまえて頂きませんと…。それに、彼女には色々言われましたからね…。」
いかにも私怨に満ちた微笑を浮かべ答える。
どうやらその原因は彼女の気質と刹那の気質の違いにあったようだ。
刹那は社交的ではなく、主に本を読んでいる様な地味なタイプである。
故に彼女は女子の間で作られる、いわゆる『派閥』の様な物に属していなかった。
それに対し、紗江は積極的で行動力もあり、リーダーとしての素質に溢れる派手なタイプだった。
そして、その手腕を生かし、彼女は『派閥』の長としてこのクラスを統制していた。
しかし、そんな中にいきなり自らの言う事を聞かない者が現れたのである。
紗江としてはどんな手段を使ってでも自らの前に立たせたくはなかった。
当然、刹那が彼女に跪く訳も無いが…。
「…でも、生意気だよね…あの子…。」
別の女子の陰口。
「…それに怖いし…。」
また別の女子が加わる。
そして、少しずつ集まり、陰口を零しあっていく。
当然刹那は言い返しも軽蔑もしない。
ただ、自らの机でゆっくりと本を読んでいるだけである。
その時、
「あら、刹那さん。いつも本を読んでいらっしゃいますのね…私にも貸してくださらない??」
そう言って本を無理矢理に奪い、読み始める。
「……返して……。」
小さい声で、しかししっかりと言い放つ。
刹那が読んでいたのは民俗学の本であり、父の資料の内の一冊でもあった。
父の事が好きな刹那にしてみれば他の人に触れて貰いたくなかった。
「あら、難しくて読めた物ではないですわね…。」
苦々しげに言う紗江。
本なら何でも同じとでも思っていたのだろう。
大学教授の資料が小学生に読める様な代物な訳がない。
「………だから…返して…。」
「……どうやっても読めませんわ……何だか腹が立ちますわね…。」
刹那がここに来るまでは成績はトップで真のリーダーであった紗江である。
自分が劣っている事を認めたくはなかった。
そして、劣っている相手が刹那であるという事がさらに腹立たしかった。
「……返して……。」
再三繰り返す刹那。
「……あら、物を人に頼む時にはそれ相応の口調がありましてよ。」
見下したかの様に言う。
周囲の人間もどちらが勝つのかを固唾を呑んで見守っている。
中には便乗して悪口を言う女子などもいた。
「……返して……。」
あくまで口調を変えない刹那。
そんな態度に業を煮やしたのか、紗江は本を窓の外へ放り投げた。
「ほら、返しますから下にでも取りに行けば良いじゃない。」
先程暗雲の立ち込めていた空はすっかり晴れていたが、夕立によって地面は濡れ、水たまりが出来ていた。
そんな所に本を落としたらもはや使い物にはならないだろう。
「……だめ!!」
走り出して紗江を止めようとしたが間にあわず紗江にぶつかりそうになる。
しかし、目の前には紗江はいなく、あるのは開いた窓。
助走をつけた彼女は止まれる筈がなく、窓の方へ動いていき、そしてぶつかり、落ちた。
「きゃあぁぁ…!!」
見ていた生徒の悲鳴。
(あれ……私…浮いて…。)
咄嗟の事で判断できなかった刹那は教室の中を見た。
そこには青ざめた顔をした紗江の顔と目を瞑っている生徒たちが見えた。
そして視界は一気に下へと落ち、浮遊感が無くなり、そして落ちる。
(……えっ…落ちてる…じゃあ…死ぬの…??嫌……怖い…。)
教室は四階にある為、かなりの高さを有する。
刹那ほどの華奢な少女であれば簡単に死んでしまうだろう。
恐怖によって悲鳴も上げられぬまま少女は落ちる。
手にあたる物を咄嗟に掴もうとして…。
そして、鈍い衝撃。
口の中に鉄の味を感じ、そして痛みを感じて、しかし少女は言った。
父に対する謝罪を、消え行く声で。
「ごめん……な…さい……。」
それきり、彼女は言葉を発しはしなかった。

(……死んだのか……私は…。)
妙に冴え渡る思考の中そう思った。
(……じゃあ……ここは…どこ??)
もやもやとした白い空間。
その中に刹那は寝ていた。
(……もう……痛くない…死んじゃったから…かな…。)
「刹那……目を覚ましてくれ…。」
呼びかけが木霊する。
(えっ…誰…??……お父さん??)
「刹那…刹那…。」
声が遠くなっていく。
(だめ…私はまだここには来たくない…まだ…生きていたい…。)
「…………お父……さん??」
弱々しい声で尋ねる刹那。
「……刹那??…………刹那!!大丈夫かい!?」
父の安堵した顔が目の前にあった。
横では母が心配そうにこちらを覗き込んでいた。
「うん……大丈夫……。」
どうやらぬかるんでいた地面のおかげで助かったらしい。
「……なんで…あんな事したんだ…私の本なんか放っておけば…。」
つい口調が強くなる。
「……だって…お父さんの…大事な……本だった…から…。」
淡く笑って答える刹那。
そんな初めて見る表情に目を丸くする。
「……本より…お前の方が…大事なんだから…もうこんな事はしちゃいけないよ。」
優しく諭す様に言う。
「うん……はい、お父さん…。」
声と共に手にあった本を渡す刹那。
手に当たる物、それは本だったのである。
「……あぁ、大切にするよ…。」
微笑む父を見た刹那は安堵と共に眠気を感じ、その中にゆっくりと埋もれていった。

それ以来、ちょっかいを出されると拒否するようにはなったが、健康な暮らしを送り、クラスの皆と仲直りをし、学校を卒業した。
あの一大事の主犯だった紗江とは一番の仲良しとなった。
紗江の親が自分の娘の行為を聞き激怒したが、刹那の意思を両親を通して伝えてもらう事で怒らないで貰ったようである。
刹那はこう言って貰ったのだ。
「……紗江さんを…許してあげて…。」
それは刹那が初めて他と付き合い、そして許した瞬間であった。
その事を母親越しに聞いたのか、刹那が学校に来るなり泣いて詫びたのを、手を差し伸べて許したらしい。
彼女とは今でも文通をしている様である。
学校は違うが仲良くある。
そんな関係だった。

この後彼女は銀誓館学園で色々な友と会い、恋人を作り、そして安らぎを含んだ戦いの日々に進んでいく事になるがそれはまた別の話である。

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