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そう思ったきっかけのお話。
それ以外に意味はないけど…。
さぁ、みんなで回れ右(ぉぃ
私の幼少の頃は、特に感情という様な物を持っていない。
ただの一度を除いて何も思わなかった。
唯一、心に残った光景。
それは、その時から見て今の私ぐらいの年齢の女の子の長くて美しい黒髪だった。
あれは私が東京郊外に転居してきて、小学校に入りたての頃。
土地勘の全くない私は、母親と買い物に行った帰り道に迷子になってしまったのである。
無論、探す当てもなくただひたすら町を彷徨った。
不安ではあったが、その不安を現す方法も分からなかったので、泣く事も出来なかったが。
そして、太陽は徐々に傾き夕方になり、辺りが暗くなって星が見え始めた頃に、その女の子に声をかけられた。
「こんばんは、もしかして迷子になっちゃったの??」
ふと振り返った時に見えたのは、とても綺麗な黒い髪。
一瞬思わず見蕩れていた。
「ねぇ、迷子かな…おうち何処だか分かる??」
なおも丁寧な口調で声をかけてくる。
その言葉は何故かほんわかと温かかった。
「お姉ちゃん、だぁれ??」
きょとんと幼い私は聞き返す。
悪意はないが、やはり今でもそう聞くであろう。
「お姉ちゃんはねぇ、とりあえずあなたの味方だよ…」
名前だけは明かさなかった。
だからこそ今でも憧れているのかもしれない。
今ではそう思うがあの頃は何でか不思議だった。
「………おうちが何処だか分からないの」
私は俯きがちにそう答えた。
内心の表現などではなく、ただ体が勝手にそうなったのである。
だが、顔は女の子によって持ち上げられて、抗議を言おうとした口に無理矢理飴玉を押し込まれる。
「じゃあ…ここら辺案内してあげるから一緒に探そうね。飴ならいくらでもあげるから…」
そう言いつつ手を差し出す。
私から見れば不思議な手であり、なおかつ何か親しみのある手だった。
過去に一度だけ繋いだ母親の手を彷彿させる様な。
「ん……お姉ちゃん、私の家は……ここに書いてあるのです…」
鞄を開けて、地図を差し出す。
ここら一体の一等地の住所が品の良い字で書いてあった。
それと一緒に飴玉を一個を差し出す。
「ん……くれるの??」
「うん……さっきの飴美味しかったから……お気に入りのあげる…」
せめてもの感謝の意を飴で表す。
不器用な当時の私のほんの少しの気まぐれ。
だけど、彼女は受け取って、そして私の手を引いてくれた。
だからだろうか…彼女の様になりたくて、少しでも近づきたくて、髪を伸ばそうとしたのは…。
「んじゃあ、いこっか♪♪」
「うん………」
鼻歌を歌いながら歩き出す彼女の横顔を見ながら、私は手を引かれて歩き出したのだった。