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このブログは『TW2 Silver rain』の神谷崎刹那、及びその背後が書いている日記です。
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プロフィール
HN:
神谷崎刹那
年齢:
31
性別:
女性
誕生日:
1993/02/10
職業:
中学生
趣味:
読書、家事全般
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ざざぁ……ざざぁ……。
一人の少女は細波の音を聞きながら、目の前の廃墟を眺めていた。
神奈川県三浦半島。
景勝地には不相応な廃墟が禍々しくその口を開いていた。
アザレア国際交流センター。
過去の経済成長で建てられ、今は廃れた『風との取引―ウィンドハンドル―』のような物。
今ではボロボロになった外見が、逆にお化け屋敷の様な風体をかもし出す。

「………今は昼なのに…不吉ですね…」

少女―神谷崎刹那―は、風に散る黒髪を一頻り整えるとその中へと消えていった。

「………油断しましたね…」

私は一人ごちた。
今いるのは鏡の間。
そこには無数の妖獣達がいて、そして私は今囲まれているのだった。
私の手元には少なくなってきた符と、母に貰った霊絹の手袋、そして予備用の榊と術扇だった。
白燐虫のお陰で僅かに発光している黒死の術手袋を前に構え、近くにしか届かないが、波動を放つ。
その力で道を作ろうにも、次々と溢れるように鏡から出てくる標的は、十重二十重に私を囲んでいた。

「……くっ…………全く……不吉です…」

一点突破は望めない。
後ろにあるのは壁と、窓。
高所恐怖症を持つ私は、飛び降りれば良いという選択肢を捨てざるを得なかった。
目の前に待つは、暗い死という影と、明るい生という光。
どちらかを自らの力、あるいは運で掴み取るしかない。
私は覚悟を決めて、その中へと突っ込んだ。



その頃、入り口には二つの人影があった。
一人はちっこい身長にモーラット帽を被り、小さな手に似合わない無骨な水色の洋弓を持った少女。
もう一人は赤毛の、壮健な青年だった。
その手に持たれた日本刀は、ぎらぎらと不敵に輝いている。

「うにぃ…雷兄~、お姉ちゃん本当にここにいるの~??」
「あぁ…ちゃんと証拠も掴んでるさ♪」

手に持っているのは小さな花柄のハンカチ。
その隅には『Setsuna kamiyazaki』と小さく刺繍で入っていた。
刹那お気に入りの絹ハンカチ。
落とすはずのないそれが落ちているということは…。
雷の脳裏には最悪の想像が形作られていた。

「………にぅぅ…行くのです、雷兄♪」
「あ…あぁ…」

軽い足音を響かせて二人は上階へと向かっていった。



「ぐっ………万策着きましたね…」

アザレア国際交流センターB棟地下2階。
じりじりと壁際まで上がりながら私は呟いた。
半数ほどを葬ったのだが、まだまだうじゃうじゃと魑魅魍魎が集まっていた。
その奥では、錆びた双刃を構えし鎧讐王が不気味な威圧感を放ち、ガシャリガシャリと迫る。
正直後ろは壁で、私はジリ貧状態だった。

「………覚悟を決めましょう…私…」

きっと相手を見据え、構える。
生きて帰ることを前提とした覚悟を決めたその時、

「うにゅ…嫌ぁ~…真奈の帽子触っちゃだめなのぉ~」

気が抜ける様な声と共に、黒い塊が落っこちて来る。
べふっ、と床に尻餅をつき、落ちてきた少女は涙目で悶えていた。

「………何で真奈がここにいるのかしら??」

一瞬の沈黙。
そして真奈は、私に抱きついてきた――戦場なのに。

「真奈、大丈夫か??そして刹那、無理はするなとあれほど言っておいただろう…」

もう一人の影が戦場を切り裂いていく。
その姿は、まごうことなき紅蓮の疾風。
私が真奈を抱きしめ撫でている内に概ねを殲滅してしまった。
正直今までの私の苦労は何なのだと言いたい。

「………殲滅完了…っと」

刀を納めた雷は、私の手を取りぺふっと頭の上に手を置いた。
そしてそのままわしゃわしゃとなでる。
その手の温もりは、安らぎをくれた。

「……無理はするなよ…こういう時は俺にも言ってくれ…」
「そうだよぅ…真奈も一緒に行ってあげるからぁ…」

二人の言葉が心に沁みた。
こう言われてもきっと根本は変わってくれないのだろうけど。
だけど、この言葉たちに自分が包まれる事がとても心地良かった。
私は生き急いでいるらしいが、そう言う訳ではない。
いつか終わってしまう幸せを精一杯享受しているのかもしれないと私は思う。
だから、今は私達が共に、ここを制す。
それを目標と定め、進む。
青い騎士の待つ上階へと。



「うは~…おっきいね~♪」

自前の洋弓をぶんぶんと振り回しながら真奈が感嘆の声を上げた。
目の前にいるのは巨大な青い鎧と槍の塊。
青とは言えど、所々が錆びて、下地の錆色が顔を出しているのだが。
じゃらりじゃらりと鎖を引き摺るそれは、かなりの速度で私に迫る。

「………刹那には指一本触れさせない…」

雷が刺突の槍を愛刀で上にすりあげ、その横から一閃を叩き込む。
その隙を突くかの様に出でる乳白色の無数の矢。
鎧をいとも簡単に貫き、そして、確実にその力を弱めていく。
私は疲弊していたが為に、戦列には参加できないに等しかったが、二人の連携は素晴らしいものだった。
流石は我が妹と婚約者である。

「………とりあえず…ここはこれで終わりです…」

ふぅ、と息を吐いて地面にへたり込む。
足が震えてどうやらもう限界らしい。

「………全く……ほら…」

私は雷の背に乗せられる。
大きな背中に乗っかって、私は家路へと着いた。
後で二人にはたっぷりと御礼をしなくちゃいけない様だけど…ね♪
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