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このブログは『TW2 Silver rain』の神谷崎刹那、及びその背後が書いている日記です。
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プロフィール
HN:
神谷崎刹那
年齢:
31
性別:
女性
誕生日:
1993/02/10
職業:
中学生
趣味:
読書、家事全般
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静かな夜の事。
今まで嫌なほどに満ちていた静寂の中、かちゃり、と弾が滑りこむ音を立て、冷たい銀の銃口が向けられる。

「私は教誨師。貴方を、殺しに来ました……のです」
「………はい??」

私、神谷崎刹那は一瞬の静寂の後に聞き返さざるを得なかった。


「ですから、貴方を殺しに来たのです!!」

たどたどしい口調で黒衣を着た童顔の少女が告げる。
はためく黒い裾が不吉に風を掴み取って、周囲に引き絞られた弓の弦を思わせる様な緊張を作り出す。

「………あらあら、モデルガンまで持ち出して…」
くすくすと笑う私。
笑ってはいても内心では穏やかではない。
いや、銃を向けられて穏やかでいられるのは普通じゃないが。
殺されかけているというのだから当然警戒をする。
それが人間としての防衛本能なのだから。
それに対して、私の微笑を嘲笑と取り腹を立てたのか、彼女はすっと目を細める。

「こっちはいたって真面目なのです。何ならその白い肌を紅に染める事も出来るのですよ!!」

可愛い容姿には似合わない無骨な拳銃。
天使の様にふっくらとした手がその拳銃によって毒され、汚されている様な気がした。
だけど、その倒錯とした美に見とれる暇などはない。
この子には何か隠した物があると、本能が警笛を鳴らしている。
だから、あえて私は問う。

「じゃあ、可愛い可愛い教誨師さん、私には何の罪があるのかな??」

ただひたすら冷徹に、表面だけの笑みを浮かべ、柔和な声で。
鋭く輝く磨きぬかれた銀色の銃身が、蛍光灯に照らされた白壁の空間に潜んでいた。
その重厚な威圧感の中、私は一縷の隙も逃さない様に目を光らせていた。

「……可愛い…これでも100年は生きてるのですよ!?」

無垢な笑みと共に、少女は特有の清純な残酷さで空気を自然と塗り替えていく。
限りなく白に近い黒。
過去に自分自身が染まり、そして今はぼやけてしまった過去の色。
その色が今、目の前に、手の中に、そして生きるための呼気にも塗りたくられていた。

「………可愛いお婆ちゃん??」

はぐらかしてみた。
これといって意味はないが、戦において激昂したほうが負け、というセオリーに従って。
でも、あまりその効果は期待しなかった。
少なくとも相手には経験があり、そしてそれを恐れぬだけの、無知か経験の胆力がある。
だからこそ私も思い出さざるを得なかった。
昔持っていた漆黒の鋭気、殺戮の狂気を。
その様相を例えるなら、冬の刺す様な冷気が一番似合っていた。

「むぅ~、お婆ちゃんじゃないもん……もうお話は終わり……とりあえず死んで、なの~♪」

パァン、と拳銃特有の破裂音。
永遠と思わせるような長く永い一瞬を経て、ベコン、と何かがへこむ。
私はその音に安堵し、そして共に思考を変える。
その間も宙を舞う少女の体。
それを考慮しつつ、私は効率よく攻撃する算段を立てる。

「全く、家の中で物騒な物を使っちゃいけないです…」

まるで全く気にしていなかったの様な軽口を叩いた。
そして、ドサッ、と少女の体が床に落ちると共に、私は手にしていたフライパンをその頭目掛けて放り投げる。
鈍い音と共に思い描いた軌道を通り、そして落ちて、ぷっくりと一つのタンコブを作った。
何故かこの時、追撃をかけようとは思わなかった。

「フライパンで弾を防ぐなんてインチキなのですぅ~…」

先程の音の正体はフライパンで、きっちりとテフロン加工されたそれは、最早機能を為さなくなっていた。
やや中央につけられた窪みの中心にはほんの少し大振りな鉛が取れない位深く食い込んでいる。
お気に入りのフライパンだった故に、私は珍しく落胆の表情を苦々しげに写した。
感情を敵の前で表すのは稀なので、そのときに私自身の警戒心が薄い事を知った。
まるで彼女は自分の大切な何かであるような、そんな感じである。

「しかし…反動であなたの体が飛ぶ様では…その銃を使いきれてないようですね…」

拳銃をゴミ箱に入れ、少女の首根っこをつまみあげる。
体が跳ねのように軽かったので、悪戯をした猫の様に少女は易々と持ち上がった。
逆に、そんな年で人を殺す様な立場なのを哀れに思ってしまうぐらいに。
吊るされた少女は先程までの威勢は何処かに飛んでいってしまったらしく、目にはじわっと涙が浮かんでいた。
こっちの内心なんか知ったこっちゃないのだろうけど。

「ふぇぇぇ………ごめんなさいなのぉ……」

ぐすん、と一つ鼻を啜り、そしてぽろりぽろりと真珠の様な涙をこぼす。
私としては泣かせるつもりが無かったので、どうにも困ってしまう。
何だか自分が悪役だなぁとか思いつつも、もやっとした思いは消えなかった。

「あー……とりあえず飴…食べる……??」

泣いている彼女を宥めるかの様に、自分が好きな林檎味の飴をさくらんぼの様な小さい口に入れてやる。
べそをかいていた少女は、口に入った球体をむぐむぐと頬張ると、泣き止み、数瞬の後にふんわりとした笑みを浮かべた。
(…………可愛い……)
殺されかけていたはずではあるが、思わず好意が―――正確には好意ではなく愛でる、つまりは愛着意識が芽生えてしまった。
そして、彼女の手を綺麗なままで留めておきたいと切に思った。

「まぁ、私が殺されそうになったのは許しましょう…。で、えてしてあなたは誰に頼まれて私を殺そうとしたのですか??」

さりげなく、しかし単刀直入に用件を聞く。
ぎらりと猛禽類の様に視線を向け、無言の圧力をかける。
したくないが、尋問の為に痛覚や幻覚を使いたくはない。
それを察したのか、一瞬びくっと体を強張らせた後で、観念したのか少女はぽつりぽつりと口を開いた。

「………教誨師って言うのは…裁判官とは違って…法的ではなくって…倫理的に罪を犯した人達を裁くのがお仕事なのです。…それで…私はあなたのお父様…神谷崎忠信様が式神を含めた魑魅魍魎を使って数十人を殺めた事による審判で、『神谷崎刹那、真奈の両名を父と同じ極刑に処す』と言われて執行に来たのです…。」

要約すれば、彼女は父の罪を起因に私と妹を抹殺しに来た、と言う訳である。
(……全く、厄介な父親を持ちましたね…私は…)
端的に言えば、この少女を簀巻きにしてからコンクリートで周囲を固め、石狩湾なり相模湾なりに沈めてしまえば済む話であり、そうするだけの実戦経験や、仲間もいる。
まぁ、仲間の中でも人に手をかけた経験を持つ人は少ないだろうが。
しかし、彼女にその運命は酷だと判断した私は、少女に取引を持ちかける事にして、会話を進める。

「……ふぅん…。それで、私を殺したいんですか…。でも、あなたじゃ私は殺せないし…第一、あなたは手練れとも思えません。私を討つには数十年早いです」

冷静に判断を下し、少女の精神に蹄鉄を落とす事で自信を完膚なきまでに崩そうとする。
予想通り落胆したが、その後彼女はキッと私を睨みつけた。
まるで自分にはそうさせるだけの起因があるとでも言いたげに。
とりあえず、彼女はここで諦める様な物分りの良い子ではなかった様である。

「なにを……これでも私は名誉ある教誨師の首四席『聖光の四重奏―セイクリッド・カルテッド―』の筆頭、アーシェ・レイゲンフィールドっていうのです。恐れ入ったかなのです!!」
「………聞いた事も無いね…」

いきなり彼女が述べ始めた自己紹介に、私は即答した。
その言葉がよほど傷ついたのだろうか、がびん、と形容したくなる様な悲壮な顔で少女は跪き、泣き始める。
その背には黒いオーラが立ち、周囲にまで何とも言えぬ悲しさを漂わせていた。
また悪役だなぁとか思い、ちょっと微笑ましく思った。

「アーシェの事を知らないですか…何だか自信なくなるのです…」
「……まぁ、今知りましたから良いのですよ…」

また泣かれそうで、そして会話の主導権を取られそうだったので、慰める。
とは言えども側から見れば、仲睦まじい姉妹であり、珍しくもない光景。
だが、先程引導を渡されかけた相手にとなると話は別。
そんな異色な展開が目の前にあった。

「で、教誨師というのは罪人を裁く為の組織だという事は分かりました…。そして、あなたは教誨師の集団に属する能力者…ですよね??」

紅茶を飲みつつ、クッキーを摘みながら、問いかける。
余裕を装いつつも、言葉の剪定を忘れないようにしながらである。。
カップの中を覗き込むと、その水面にはぽわんぽわんと紅い波が立っている。
一方、飴を味わっていた少女はハッタリのはずの質問に、ぎくっと驚愕の顔を浮かべた。
飴を食べてるからと言って油断してはいけないだろうと思いながら苦笑し、それを見て、疑問を確信へと変える。
とりあえず、先程の何か隠しているという気配はこれだった様である。

「私は………確かにゴーストを倒すためのハンター―能力者―なのです。これでも一応光の使い手、ヘリオンとしてある程度の実力はあるのです。………だけど……」

少女は言葉を濁す。
その背後には自らが窺い知れぬ何かがある事は分かったが、それ以外の事となると推測でしかない。
だから、私はその推測を口にした。
それがもし当たっていたとしたら、私は彼女を敵と見れないから。

「……………もしかして…戦うのが怖い…のかな??」

案の定、当たっていた。
彼女はぎくっと跳ねて、そしてこくりと頷く。
実に分かりやすく、素直で、かつ純真である。
それ故に、教育を疑わずに、そして倫理の守護者として逆に必要の無い倫理、即ち相手の死に対する感情を断ち切って生きてきたのだろう。
そして、現場での怨嗟や苦悶に触れ、恐れを持ったのだろう。
それは、知って、その上で殺めるのとは違う、無知による恐怖。
それに彼女は怯え、双肩を震わせていた。

「………お姉ちゃんは……人を殺したことないの…??」

そっと、しかし力強い口調の質問。
その中には答えをはぐらかさないで欲しいという思いが秘められていた。
それ故に、真剣に答えよう、そう私は思った。
過去に過ぎ去った、未だ償える事のない一つの贖罪の記憶を。

「あるよ…。この手で、最も親しかった人を。その時の感触も、光景も、言葉も、全てを鮮明に覚えてる」

しんとした空気の中で、私は聞き手がいる『独白』をした。
ぽつり、ぽつりと。
まるで自分自身を悔い、そして戒めるかの様に。
そして、自らの手首に良く研いだ剃刀を食い込ませるかの様に。
酷く醜い純白の『独白』は私にとって自傷行為だった。

「そう、私はこの手で、純銀のナイフを握り締め、友達の…正式には友達だった物の胸に突き立てて、そして半回転捻った。故意に殺人を犯す為の殺傷法で、かけがえのない物を自分で壊したの」

自嘲、自虐、自傷。
だが、確かに私はそういう過去を持っており、そして、これからも持ち続けるのだ。
遠い昔に『過去は雑誌と一緒である。読み終わったら捨ててしまえば良い』と言った人がいるが、私はそうはなれない。
一生それを悔やみ、時には悪夢としてその場面を見て、晴れる事のない苦悩を背負って生きるのだろう。
それが自分の咎、罪であるから。

「その時彼女が言った感謝の言葉も、安堵の言葉も…それが私に対する刃に思えた。とても鋭い、何よりも切れる剃刀に。それは多分、あなたが今まで知り得なくて、そして、これからも知る必要がない痛み。あなたの様な純粋な子が、一生背負う必要のない罪」

彼女に負わせるには酷で、そして本当は背負うべき罪。
キリストは全ての罪を自らが負って死んだと言う。
それは原罪であり、人類の祖先であるアダムとイブの罪。
だから、彼女にとっての『原罪』、つまり人を殺めてしまった事。
それを自らが背負おうと思った。
何でそんな事を思ったかは分からない。
罪なんかを好きで背負いたい人はこの世にいないし、いたとしたらそれを皆が嘲るだろう。
だけど、私はその罪を被りたかった。
ついさっきまで殺されかけていて、敵で。
それでも、人殺しに余罪がついたって構わないと思った。
全て世界結界というベールが覆い隠してくれるから。

「……私の話を聞いて恐れを抱いた??それとも嫌悪や軽蔑を覚えた??でも、私はそうした過去を持ってる。あなたに殺されるに値するだけの罪人であり、愚か者よ??」

口に出してはっと気付く。
私が深層心理で死を望んでいる事に。
他に対して説得している自分が本当に偽善者だと思った。
そして、それと共に私はそこまでその友が好きだったのだとも思った。

「…………嫌な事思いださせちゃったね……。私の所為だ……ごめんなさい…」

少女は、彼女は謝罪しか出来なかった。
何よりも相手の悲しみに触れたから。
そして、それと共に刹那にとってその友達は『一度死んだ存在となってでも共に生きて欲しいだけの存在』である事を感じたから。
それと共に、人の過去に介入してしまった自責の念が頭にあり、ぐるぐると巡った。
茶の髪の毛が優しく揺れた。

「…………私が、なってあげる。漆黒の教誨師に…」

意を決してそう言った。
言ったというか、不意に口から零れた。
その時の彼女の顔は、一瞬の苦悶の後、ぱっと輝いた。
その笑みは、今までになく暖かく、そして、年相応に見えた。
そんな後二人は眠りについたが、起きた時彼女はいなかった。
枕元には一通の手紙が置いてあり、そこには遠くに逃げると言った様な文章と、黒衣が置いてあった。
それは、私が今まで用いている何よりも黒い死装束。

そんな中で私は教誨師になった理由を考えていた。
それは、妹の真奈と同じぐらいの年齢の少女だったから。
そして彼女がこれからとこれまでに将来苦しむから。
理由はそれだけで良いと思った。
例え私が深遠の奈落に落ちようとも、あの笑みを再び見れるなら良いと、一瞬でも思ったから。
そう言い訳を自分にしても良い気がした。
本当は友への贖罪のためだったとしても、そう思いたい。
こう思えたのは、生涯に三人だろう。
今までの友と、そしてこの日の彼女、そして未来にいる私の婚約者。
過去と現在と未来にそれぞれ守りたい人がいる。
だから私は手を深紅に染める。
それは、最も嫌いだけど、もっとも自分に似合う、そんなかけがえのない色。
過去の友達の唇と、この日にあったアーシェの瞳と、そして、未来に出会う婚約者の髪と同じ、鮮血の様に目立つ、煌びやかな赤に。
それが私の罪であり、そして私の最もやりたかった事だから。
私は今も『漆黒の教誨師』として、愛すべき人と共に生きていく。
そして、それはずっと変わらず、続きの見えぬ階段の様に足場のなくなる日まで、ただ延々と伸びているのだった。

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……長くてくどくて暗くてごめんなさい
書いてて思ったけど6000字って何だ~(汗
なんか卒論の数分の一は書いてる…。
っと、とりあえずこれを読む人は暗くなっても良いような気分の時に読みましょう。
駄文な上に滅茶苦茶暗い気分になります。
ついでに言うとボケも何もなく、シリアスです。
ただ、こういうのが好きな人には良いかもですね(いないだろ
では、失礼するですよ…。
刹那 2007/03/19(Mon)00:56:05 編集
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